信越五岳トレイルランニングレース110kmレースレポート

f:id:urakov:20191005065733j:plain

期日 2019年9月20日(日)

スタート時刻 6:00  距離約110km

記録 12時間42分16秒     

結果 3位

  

 

<使用ギア> 

ウェア: S-LAB SENSE TEE

S-LAB SENSE SHORT

ソックス:SENSE SUPPORT

シューズ:SENSE PRO 3

インソール:superfeetカスタムカーボン

ザック:S-LAB SENSE ULTRA 5SET

ベルト:S-LAB MODULAR BELT

時計:SUUNTO SPARTAN SPORT WRIST HR

ニューハレ:Vテープ(膝)V+Xテープ(腰)

Ⅰテープ(ハムストリングス、ふくらはぎ)

ジェル:SHOTZエナジージェル

レース中30分おきに1本ずつ

(レモンライム、ワイルドベリー、コーラ、マンゴー)

レース中眠気を感じた時に

(コーラバニラ×4回、グリーンプラム×4回)

給水:エレクトロライトショッツ

(レモン、カシス。水500mlに対して1本。)

 

<出場までの経緯>

今年はこの信越五岳トレイルランニングレース110kmをメインレースに据えた。私が住んでいるこのエリアで行われるビッグイベント。2013年に一度だけ出場したが、その時は7位で入賞ならず。その後はまとまった練習時間が取れずに出場を見送っていたが、ここにきてある程度長時間の練習時間が確保できるようになってきたこともあり、出場を決めた。

長時間、長距離に対応するため、6月には美ヶ原トレイルランニングレース80kmに出場。その翌週に志賀高原マウンテントレイル40kmに出場。疲れた状態でもある程度走れる体やメンタルを養った。8月には南アルプス甲斐駒ヶ岳、千丈岳をめぐるルートを12時間半ほどかけて廻った。そのほかには、毎週末に高社山往復(累積標高1000m程度)、週一回駅伝チームの練習でトラックでのスピード練習を行ってきた。

さて、私がエントリーした地元枠はトレイルのメンテナンス作業を行うことが必須条件。八月にコースの看板設置作業を行った。この大会が本当に多くの人の熱い思いや協力によって造り上げられていることを感じ、微力ながらその一部を担わせていただいたことは、自分にとってとても良い経験になった。

 

<ペーサー>

 信越五岳トレイルランニングレースでは、ペーサーが途中からゴールまで選手と並走することができる。荷物を持って走ったり、何かを手渡したりといった直接的な援助はできないが、辛い場面で一緒に走ってくれるだけでも力になる。今回はサロモンのチームメイトであり、幼馴染の小出徹にペーサーを依頼した。小出が飯山に帰省した際に一緒に走ることはあるが、同じレースに出場することはここ最近なかったこともあり、一緒に走りたいという思いが強かった。

 

f:id:urakov:20191005071055j:plain

<前日~スタートまで>

大会前日は斑尾で受付をし、ブリーフィングに参加。大勢の知り合いやいつもサポートしていただいている方々に合うことができて、気持ちが高まる。帰宅後、装備品の準備。どこをだいたい何時ぐらいに通過するか、ジェルは何本必要か、などを計算した。これが意外と時間がかかった。入浴を済ませて、10時頃就寝した。

大会当日は3時に起床。3時10分頃から朝食を摂り、着替えてから3時40分ごろ家を出発した。会場には4時ごろ到着。ニューハレの芥田さんにテーピングを施していただき、その後ウォーミングアップ。110kmといえど、スタート後のペースは結構速い。きちんと体を温めておかないといけない。妙高側からのバスに手配漏れがあり、スタートが30分遅れるハプニングがあったが、これもまたトレイルランニングレース。大きな動揺はなかった。

 

<スタート~バンフ>

午前6時、110kmに挑む選手たちが一斉にスタートした。最初は慣れ親しんだ斑尾エリア。バンフまでは毎年出場している斑尾高原トレイルランニングレース50Kmと同じルートだ。スタート直後の先頭集団のスピードは、予想通り速い。スタート位置が3~4列目だったため、追い付くのに少し時間がかかった。しばらく走ると、大瀬選手が先頭に出て、集団を引っ張る。彼のスピードについていってはいけないが、ある程度上位を狙える10番前後では走りたいと思っていた。上り坂では周りの選手についていくのがやっとだったが、時折現れる下り坂では周りの選手から抜け出すことができた。決して自分が飛ばしているのではなく、流れに身を任せた結果だ。4番手で走っていると、トップの大瀬選手と2位の西村選手がミスコース。「こっちこっち!」と声をかけて、先へと進む。下り坂で荒木選手に道を譲ってもらって、先頭を走ることになった。トップを走るつもりはなかったが、誰かを待つのももったいないので、いけるところまで自分のリズムで行くことにする。そのうちに大瀬選手が追い付いてきて、しばらく話しながら並走するも、平地では大瀬選手のスピードが勝り、自然に距離が開いた。菅川へと向かう林道の上り坂で西村選手が追い付いてきた。菅川のウォーターエイドで水を補給し、斑尾山への登山道へと入っていった。

道のりはまだ長いので、無理して走らずに、斜度のきつい登り坂は早歩きでいくことにした。西村選手は歩くことなく走り、その差はみるみる開いた。ここが私と西村選手との決定的な差なのだろう。現時点では自分のペースに徹し、単独3位で斑尾山山頂へ。そしてバンフまでの下り坂は流れに身を任せて下る。バンフに到着したときはスタートから2時間6分ほどが経過。去年のトップ選手が2時間5分台だったことを考えると、まずまずのスピードであるといえる。

 

<A1 バンフ 22km地点>

ここはアシスタントポイントになっている。今回はペーサーの小出がここで待っていてくれた。500mlの水(エレクトロライトショッツを溶かしたもの)2本を交換し、ショッツ4本ずつをいれたソフトフラスクを携帯。コーラを一杯いただいてエイドを後にした。

 

<バンフ~熊坂>

ここからは沼野原湿原、赤池を経由して袴岳山頂を目指す。それほどきつい斜度の登りは無いが、じわじわと高度を上げていく。袴田岳へは偽ピークが2~3回あり、歩きたくなる。速くはないが、走り続けた。袴岳山頂からスイッチバックの下り坂を下り、兼俣林道へ。長い砂利道を下り、熊坂エイドに到着した。前とも後ろとも差が開いている模様。

 

f:id:urakov:20191005070332j:plain

 <A2 熊坂 39km地点>

熊坂エイドでは、ソフトフラスクに水を補給。マイカップでコーラを2杯いただく。豆腐を勧められたが消化できる自信がなく、断念。ミニトマトを一つとバナナを一切れいただき、エイドを後にする。トイレに寄ってから、先を急いだ。ここまでのペースは悪くない。

 

<熊坂~黒姫>

ここはこのレース最大の難所(だと思っている)関川沿いの砂利道がある。さえぎるもののない登り坂の砂利道。直射日光が容赦なく照り付ける。ペースは上がらないが、とにかく走り続けることを心がける。水の消費量が多くなっていた。変化がないこの区間は精神的にもきつい。

f:id:urakov:20191005075316j:plain

修行のような砂利道の終盤に設けられた、私設エイドの宴会隊エイドに到着。熊坂で補給した水分も随分使い果たしていたので、このエイドは本当にうれしい。水を補給し、果物を頬張ってエイドを後にした。関川を横切る橋のあたりでは、被り水を用意していただいてあり、ありがたく水をかぶる。ここからは再び高度を上げ、東海自然歩道を経由して次のエイドである黒姫高原を目指す。スピードは出ないが、とにかく走り続けることを心掛けた。このあたりからは100マイルの選手と合流していて、「頑張りましょう!」と声を掛け合いながら先へ進む。A3黒姫に到着。

 

<A3 黒姫 52km地点 5:11:00 エイド滞在3:00> 

ソフトフラスコに水を補給。マグマ1本。コーラ2杯。リンゴを3~4切れ。まんじゅう半分を食べる。

 

<黒姫~笹ヶ峰

黒姫エイドを出発してゲレンデを登ると、ここからも難所の御巣鷹林道が待ち構えている。じわじわと高度を上げる変化のない単調な林道は4~5km続く。ここも修行。遅いけど走る。それでも周囲が林になっているおかげで、関川沿いよりは涼しく感じる。標高を上げるとそれほど暑さを感じることなく走れたと思う。永遠に続くような錯覚に陥る林道だったが、終わりがやってきた。御巣鷹林道に別れを告げ、西野発電所方面へ下っていく。ここは急激に下る区間。下り始めると気持ち悪くなってきて、異変を感じた。力が入らなくなってきて、フラフラしてくる。内臓が揺れて、ダメージを受けたのか…。下りきってからの急な上り坂も、なんとか歩いて登るのが精いっぱい。ペーサーが待つ笹ヶ峰グリーンハウスに向かう道のりも力が入らず、とても長く感じた。歩いたり走ったりしながら、なんとか笹ヶ峰グリーンハウスに到着するも、元気な状態ではない。

 

<A4 笹ヶ峰グリーンハウス 65km 6:55:32 エイド滞在4:11>

ここでドロップバッグを受け取る。そして、ペーサーの小出と合流。水分を補給し、コーラを2~3杯いただく。おなかがすいたので、まんじゅう二分の一切れいただく。気持ち悪くてさすがにカレーライスは食べられない。トレイルバターが塗られたクッキーのようなものを2切ほどいただいて、先を目指す。

 

笹ヶ峰グリーンハウス~大橋林道>

ペーサーがついたものの、体調は悪く、ペースは上がらない。何とか走るのが精いっぱい。牧場を抜けて、乙見湖を通過。夢見平を目指す。乙見湖からは長い階段が待ち構えている。ここで大腿が攣る。ストレッチして塩熱サプリを補給。一向にペースが上がらないが、焦らずに先を目指す。

 夢見平からは走りやすいトレイルが続く。とはいえ、体に力が入らず、力強く走ることはできない。とぼとぼと何とか走るのが精いっぱい。13時を過ぎ、暑さも感じる。途中、一カ所湧き水があったが、スルーした。今思えば、ここで体を冷やしておけばよかった。走りながら、もしかしたら熱中症気味なのではないかと思い始めた。水が流れているところでは、水をかぶったが、水量が多い所は無く、それほど体を冷やすことはできない。

75km地点の西登山道入り口では、ウォーターエイドがあった。ここで水を補給し、西登山道へと入っていった。ここは、それなりの上り坂が続く。走ることはできず、我慢して歩き続ける。腕時計のバッテリーが終わりそうになっていたので、ペーサーの小出に、ジェル補給の時間管理をお願いした。ジェルは30分に1本補給している。体調がよくないので、気持ち悪くて、ジェルを食べたくない場面もあった。「食えない」というと、「食え食え!」と激を飛ばしてくれた。一人だったら気持ち悪くてジェルを食べられず、ハンガーノックになっていたかもしれない。

f:id:urakov:20191005070353j:plain

西登山道の上り坂を登り切るあたりで、ふり返ると、荒木選手が近づいてくるのが見えた。まだまだ元気な様子だ。みるみる抜かされるも、ついていくことができない。残りはまだ30km以上はある。今の体調で無理して追うことはやめ、確実に進むことを考えた。

大橋林道へ向かう途中、下り坂で激しく転倒した。足が上がらなくなってきている。それでも下り坂は何とか走ることができ、ようやく大橋林道へ到着した。

 

<A5 大橋林道 80km 9:03:17 エイド滞在 5分ほどか>

私たちがエイドに入る頃には荒木選手はエイドを後にしていた。自分はだいぶ疲れていたので、ここではしっかり補給し、椅子に座って少し休憩した。水を補給し、コーラを2杯ほどいただく。果物もあったので、ほおばった。梅干しも食べた。饅頭も食べた気がする。

 

<大橋林道~戸隠スキー場入り口>

いつまでも休んでいるわけにいかないので、エイドを後にして先を急いだ。ここから先は戸隠エリア。走りやすいトレイルが広がり、自分が大好きなエリアだ。砂利道を抜け、トレイルに入るとすぐに川があった。ある程度水量もある。迷わず川に入り、アイシング。頭からじゃぶじゃぶ水をかけて、できるだけ体を冷やした。それから、川や水が流れているところを見つけると、水をかぶって体を冷やすようにした。すると、体が軽くなってきて、ペースを上げて走れるようになってきた。

f:id:urakov:20191005065747j:plain

ロングレースでは、必ず辛い場面があるが、我慢していると、また走れるようになると聞いたことがある。あきらめないでよかった。笹ヶ峰からの苦しい区間が嘘のようにペースが上がる。むしろ飛ばしすぎに注意して、先を追う。時刻も15時を回り、気温も涼しくなってきていた。

鏡池を過ぎて、戸隠スキー場に向かうあたり(90㎞地点あたり)で前を走る荒木選手が見えた。荒木選手は上り坂を歩いていた。自分は復活していたので、登り坂も走る。ここで、追いつき、先に行くことができた。そこから先の登り坂も快調に走ることができ、戸隠スキー場到着。

f:id:urakov:20191005075239j:plain
 

<A6 戸隠スキー場 92km地点 10:32:28 エイド滞在3:54>

ここではソフトフラスクに水を補給。定番となったコーラを2~3杯いただいた。お腹がすいていたので、アンパンをいただいたが、消化が今一つだったようで、後でやや苦しむことになった。

 

<戸隠スキー場~飯縄山登山口>

ここからはこのレース最大の難関、瑪瑙山が待ち受ける。ここまで90km以上走ってきた体での山越え。ここをペースダウンせずにクリアできるかが、ゴールタイムに大きな影響を及ぼす。小出とも走りながら瑪瑙山でペースアップすることを話していた。ペースが上がらない苦しい時間帯には、ペースアップできるとは思っていなかったけれど、この時はすっかり復活していた。上り坂でもしっかり走ったり、早歩きしたりしながら、登っていく。視界の開けたゲレンデでは、後ろから来る選手に背中を見せないように、頑張って走った。まだまだ体が動くのが嬉しい。山頂からは下り坂。ここは自分が大好きな区間。自然に足が前に出るし、ペースも上がる。下り坂を終えるころ、あたりは暗くなってきていた。ここでヘッドライトを装着。明るい時間帯と比べてどうしても視野が狭くなるので、ペースは少し落ちる。それでも間もなく102km地点、「飯縄山登山口」に到着した。

 

飯縄山登山口~飯綱高原ハイランドホール(ゴール)>

飯縄山登山口のウォーターステーションではソフトフラスクに水を補給。ここから先はゴールまで林道を約8kmひたすら走る。後続との差が気になったので、途中、トレイルサーチでタイム差を検索。4kmほど進んだところでも、まだ後続は飯縄山登山道に到着していなかったので、追いつかれることはなさそうだと分かった。ゴールまでは、小出といろいろな話をしながら走った。こういう時にも気心知れたペーサーの存在は本当にありがたい。ゴールに近づくと、小出の足が売り切れになってきた。無理してペースを上げる場面ではないので、最後まで一緒に走った。長い時間、暗闇を走り続けたが、とうとう明かりが見え、人の声が聞こえてきた。ゴールだ。最後は小出と手をつないで3位でフィニッシュテープを切った。前の2人に追いつけなかったのは悔しいけれど、途中苦しい時間帯を耐え、3位を守ることができて嬉しかった。そして何より、ペーサーの小出と一緒にフィニッシュできたことが本当に嬉しかった。

f:id:urakov:20191005071623j:plain

<考察>

ロングレース対策として、行ってきた練習の成果が出た結果だと思う。レース展開や補給のしかた、暑さ対策など、まだまだできそうなことがたくさんあることが分かった。来年もう一度頂点を目指して挑戦したい。そのために、トラブルなく走り切ることに重点を置いて戦略を練っていきたい。

f:id:urakov:20191005070529j:plain

f:id:urakov:20190916113518j:plain

翌日の表彰式。あんなにたくさんの人の前で表彰してもらう経験は今まで無いかもしれない。