ほんとに長いですよ

今回は満足の出来る結果を残せたことをまず嬉しく思う。この結果は去年の世界選手権(イタリア、forni)大会で学んだ反省点を克服するための練習の成果だと言える。また、スタッフの方々のサポートがなければこの成績を収めることは出来なかった。
◎反省点の克服
 去年の世界選手権に参加したときはスキーアーチェリーをはじめて約11ヶ月。自分の実力が世界でどの位置にあるのかを「知ること」が一番の目的であった。その大会で私が感じたのは①スキーは外国人選手と対等に戦えるということ②アーチェリーさえヒットさせることが出来れば必ず上位に食い込めるという手ごたえだった。
 そこで、今シーズンに向けての課題はスキーの走力維持とアーチェリーのレベルアップだった。私のトレーニングプランでは、秋ごろまでにアーチェリーの精度を高める→シーズンまでにある程度の早射ちを身につける→雪上ではコンビネーショントレーニングで実戦に備える、というものだった。

【アーチェリー1】
 トレーニングプランを進めるにあたって、いつでもアーチェリーを射てる環境が必要だった。昨シーズン終了後、幸運なことに父の実家の牛小屋を借りることができた。これでトレーニング場所は確保することが出来た。その牛小屋を使い、週1,2回は仕事が終わってからアーチェリーを射ち込んだ。また、純アーチェリー競技のように、紙的を使用し、得点をつけることで精度を高めた。また、9月にはアウトドアの、12月にはインドアのアーチェリー大会にも参加した。しかし、ある程度の得点を出すことが出来るようになったが、的に当たるときと外れるときの波が大きく、スコアが伸びなかった。具体的には、3発に1発はミスするという内容。シーズンを間近にして、トレーニングプランに対して遅れていると感じた。

 12月のアーチェリー木島平インドア大会以来、頻繁に上田市にあるアーチェリー場に通った。1人で練習していても成果が上がらないと感じたからである。いくら自分に「やる気」があっても、間違ったフォームで練習していては成果が上がらない。上田にはアーチェリーの指導者、Murakami氏がいる。週末で、仕事が空いている時間を使ったり、平日の仕事が終わってから行き、指導を受けた。その結果、アーチェリーの精度が上がってきた。
 1月末には関東アーチェリーバイアスロンクラブ主催の「野沢カップ」に参加した。しかしながらアーチェリーのヒット数は16射でたったの3射。ここでもトレーニングプランに対する遅れを感じた。 3月のワールドカップモスクワ大会まで残された日数は約1ヶ月。

 しかし2月には調子を上げることができた。ワールドカップ1戦、2戦を終えて帰国したkojiと一緒に練習をしたのがきっかけだった。kojiのシューティングのテンポは私がそれまで行っていたものより数段速かった。技術的な話になるが、狙い始めからリリースまでを早くすることにより、筋肉が働いているうちにリリースすることができる。幸運にも私は日本にいながらにして間接的にワールドカップクラスのシューティングに触れることができた。これがきっかけで的中率が安定してきた。さらに、ドロップダウン的を使用したコンビネーショントレーニングを増やすことで、一連の流れの中で感覚的にターゲットを倒すトレーニングに切り替えた。これがうまくいくようになり、その流れのままワールドカップを迎える
ことができた。

【アーチェリー2】
 今回はある程度、弓具の調整ができるようになっていた。現地でのトレーニング中にアクシデントでストリング(弦)が切れてしまったが、予備のストリングで対応することができた。ストリングハイトをあわせたり、ノッキングポイントを自分で調整したりすることができた。もしこれができなければ今回はとんでもなく悪い結果になっていただろう。

【スキー】
 この間もトレーニングの中心はスキーのためのトレーニングであった。夏季は陸上トレーニングを中心に行った。ローラースキーも高校の生徒と一緒に行った。また、1週間に1度以上のスピードトレーニングも欠かさなかった。また、1ヶ月に1回以上はロードレースや駅伝大会に参加。走力のアップを図った。秋には右ひざを痛めてしまったが、トレーニングの質はなんとか維持することができた。
 今季は降雪が早く、11月下旬にはスキーを履くことができた。その後も記録的な大雪となり(私にとっては恵みの雪だった)順調にトレーニングをこなすことができた。平日は毎日、仕事が終わってからスキーコースへ足を運び、トレーニングを積んだ。
 心配だったのはレース経験不足。野球やサッカーなどで言う「練習試合」が不足していた。実践的な練習をつまなければ試合でいいパフォーマンスができない。そこで、自らタイムレースを計画したり、地元の中学生に混ぜてもらってタイムレースをした。1月、2月にはひとつずつクロスカントリーの大会にも参加した。実践的な練習を重ねることでスキーの調子も上がった。

◎スタッフのサポート 
 今大会ほどスタッフのサポートがありがたいと感じた大会はない。スキーアーチェリーは複合競技であるため、使用する道具が多い。また、やらなければいけないことが多い。もし選手だけで参加した場合、大会のエントリーから飛行機の手配、宿舎の予約、交通手段、スキーの手入れ、アーチェリーの調整、自分の体の手入れなど、数え上げたらきりがないと思うくらい自分でやらなければいけないことが多い。さらに、この過程でワックスやアーチェリーの調整を失敗すればいままでのトレーニングが水の泡になってしまうこともある。また、スタート前に疲れきってしまう危険性もある。
 そこで考えられることは2つ。①ワックステストや入念なアーチェリーの調整をカットし、体の調整を優先させる方法。②スキー手入れや身の回りのことをサポートしてくれるスタッフをつける方法。自分のおかれている状況によりどちらを選択するかは変わってくるが、今回はありがたいことに②の状況をつくってもらうことができた。

 まず、ワックスマンとして同行してくれたMARUさん。ロシアに行く前から練習に付き合ってもらい、何度か打ち合わせもした。そして、大会期間中は私たち選手に代わってスキー手入れをしてくれた。おかげで十分体を休めることができた。また、大会前の練習期間では普段ではできないワックステストもしてくれた。おかげでよく滑るスキーで大会に出ることができた。私は2月に高校生の引率でスキーのインターハイに行ったとき、サポートの人たちが何度も何度もワックステストをしているのを見てきた。できればこれはやっておきたいと思っていた。なぜなら、ワックスは必ずしもセオリーどおりには行かないからである。テストをしてみないとわからないことがたくさんある。今回も日本で必ずといっていいほど使う「高フッ素」のワックスよりも「低フッ素」のワックスのほうが有効であることがわかったし、さらに「純フッ素」パウダーも使ったほうがいい事がわかった。

 そして体の調子を見てくれたImaokaさん。普段は仕事に追われ、練習に時間を費やし、なかなか体のケアを十分にできない私。体の調子を上げるためのストレッチやマッサージは非常にありがたい。また、サプリメントもとても効果的だった。実はロシアに来る前、忙しさからか、少し体調を崩し、心配しながらロシア入りした。しかしながら、Imaokaさんに体の調子を見てもらいながら調整をするうち、どんどん体調が良くなっていくのがわかった。とてもいい状態で大会に臨むことができた。

 さらに、身の回りの心配をしてくれたOkudaさん。素晴らしい英語とロシア語で積極的にコミュニケーションをとってくれた。ミーティングや宿泊費の支払い、買い物など日常生活で困ることはなかった。おかげで競技だけに集中することができた。
 そして団長のKomatsuさん。リーダーシップをとって日本チームをまとめてくれた。

 女子チームの皆さんも明るく、日本チームとしていい雰囲気で試合に臨むことができた。

 そして男子チームのYAMAさん、KOJI。かれらからは数え切れないほどのパワーや技術、ガッツ、経験をもらった。

◎最後に
 今回の好成績はこのように日本チーム全員で勝ち取ったものである。初日のスプリントの2射目でペナルティー数の判定に対してすぐに抗議してくれたことからもチームワークのよさが伺えた。選手だけの参加ならあの場面は2位ではなく、5位で終わっていただろう。
 最後にスタッフの皆さん、一緒に参加した選手の皆さん、日本チームで大会に参加することができて最高でした。ありがとうございました。