野沢温泉マウンテントレイル65Kレポート

盲腸の手術から1ヶ月間、この大会に出場するためにリハビリをこなしてきた。
大会1週間前には北アルプスを中心に白馬エリアの山で4〜5時間のトレーニングも積む事ができた。
体力が戻りつつあるという手ごたえは感じていたが、レースでどこまで走れるかは未知。
そもそも体調万全だとしても65kmという距離は未知。
そして4100mという標高差。
夏の野沢温泉には学生時代の合宿で何度も訪れている。
暑さはイメージができてしまうだけにハードな消耗戦になるだろうということが予想できた。

今回のコースはメイン会場を中心に3つのセクションに分かれており、その都度メイン会場に戻ってくるコースレイアウトだ。
メイン会場で荷物の変更が可能なので、何を持って行くかがレースのカギを握る。
スタート前、霧に包まれたメイン会場に仲間達が集った。
互いの健闘を祈り、午前7時、一斉にスタート。

序盤

レース序盤は温泉街をぐるりと回り、赤滝登山道を目指す。
自分がどこまで走れるのか正直分からないが、先頭集団でレースを進めたいと思っていた。
しかし、スタート前から予想してはいたが、先頭集団のペースが速く、とても65kmのレースのスタートとは思えない。
今思えば私にとって30km程度のレースとさほど変わらないペースだったような気がする。
7,8番手で温泉街を後にし、長い砂利道を淡々と走り、登山道へ。
ここはほぼ歩こうと思っていたが、前方に追いつきたいのでいいペースで走ったり歩いたり。
ここで3人ほどパスし、頂上へ。
ペースも悪くないし、補給もしっかりできている。
ここからじわじわ順位を上げたいと思っていた。

第1セクション下り

ここからは風ごうろ登山道を下ってゆくが、途中には苔むした大きなごろごろ転がっていて危険なセクションだ。
転倒しないように気をつけながらもリズムよく下ってゆく。
転倒こそしなかったものの、途中でスネをコツンと岩にぶつけてしまった。
ふと見ると皮膚がパックリ割れて、スーッと流血。思ったよりキズが大きい。
ビックリしたが、ほとんど痛みもなく、走りに支障は無かったので今まで以上にケガに気をつけ、そのまま進んだ。
第1セクション終了時には5位まで順位が上がった。

第2セクション

メイン会場でショッツを補給し、第2セクションへ。
北竜湖を経由して小菅神社を目指す。
朝方の霧は晴れ、容赦なく太陽が照りつける。ぐんぐんと気温が上昇。
ここまでずっと下ってきたからか、平地やだらだら上りで足が進まなくなる。
明らかに失速。前を追う展開ではなくなってしまった。
小菅神社参道に入るとその傾向は顕著。
ポツポツと後ろから来た選手にパスされるがついてゆけない。
2度目にメイン会場に戻る頃には上り坂を走る元気はなくなっていた。

第3セクション

しかしながらこの後一番長いセクションが待ち受けている。
メイン会場でザックを交換。水をがぶ飲み。
歩いてでも完走する覚悟でメイン会場を後にした。
ジリジリと照りつける日差しに体力は激しく消耗。既に40km近く走っている。
下りで走ろうとすると筋肉が痙攣し始めた。
極度の疲労によるものか、体内の電解質バランスの以上か。。。
さっき真水を飲んだのもいけなかったのだろう。
後悔先に立たず。
仕方が無いので下り坂も歩く。それでも一歩一歩進むのが精一杯。
ゲレンデやアスファルトの道路は日陰が無く、次第に朦朧としてくる。
熱中症だけは避けなければならないのでなるべく日陰を選び、淡々と歩き続ける。
しかし、だらだらした上り坂が続き、一向に高度が上がって行かない。
コースの最高地点に近づく頃には時折立ち止まらずにはいられなかった。
エイドステーションで水を補給。水を頭からかけ、後は下るだけ。
しかしながら体が言うことを聞かない。
ストックを持って歩いているにも関わらず両足が痙攣する始末。
なんとかゴールしたい思いで歩を進めるものの、めまいでまともに路面を見ることもできない。
体が「止まりなさい」という信号を発していた。
このままでは危険だと判断し、レースをやめる決意をした。
関門員さんにその旨を伝え、テントで休む。
すぐにでも会場に連れて行って欲しかったが、休憩して回復できたらリタイヤポイントまで自力で下山して欲しいとのこと。
無理なら車を回すということでしばらく様子を見ることに。
40〜50分ほど休んだだろうか。
何人もの選手が私の前を通過し、私は座り込んだり寝転がったりしながらその様子をなんとなく眺めていた。
車を回してくれそうな気配が無い。
「早く帰りたい。」そう思った。
ゴールまで約15km。歩いた方が早そうだ。
歩けそうな程度に回復した。夕方になり、日差しが弱まる。日中より涼しくなりつつある。
ここにいても仕方ない。コース上を歩き始めることにした。
無理しない程度に走ってみると、痙攣も起きない。
ただただ淡々とロードやトレイルを下った。
結局そのまま会場まで戻り、ゴール。

結果9時間34分43秒
総合23位(217人中)
年代別6位(37人中)

一度は諦めたレースだったが、ゴールできた事が嬉しかった。
ダメージを受けたスネはその日の内に病院で縫合してもらい、現在治療中。



ウェア、シューズ:SALOMON
ソックス:ブリッジデイル
ハイドレーション:エレクトロライトショッツ
補給食:ショッツエナジージェル
テーピング:ニューハレ