〜10kmマススタート〜

マススタートという競技

 マススタートは全員の選手が一斉にスタートする。この競技は2.0kmコースを使用し、シューティングが4回、計16射する。シューティングの回数が多いので、アーチェリーの比重が大きい競技だ。
また、パシュートと同様、見た目で順位がわかるので、非常にエキサイティングだ。ただ、シューティングレンジの数が限られているので参加者数が制限される。今回の大会にエントリーしているのは44人。それに対し、出場できる選手は的の数と同数の28人。ではどうやって選手を選考するのか?それは、ワールドカップの総合ポイントによってである。したがって、ワールドカップの1戦(ドイツ)、2戦(イタリア)に参加していない私は出場できない可能性があった。しかしながら、今大会での2位、5位でポイントを稼ぎ、出場することができた。

この日の競技

この日もスキーでアドバンテージを取りたかったが、なかなか前に出ることができなかった。私にとってのこの日の敵は「風による寒さ」だった。スタート前から体感温度が低かった。
 大勢でシューティングレンジになだれ込んできての1回目のシューティング。まずい。手がかじかんで矢をつかめない・・・。そして、アーチェリーを構えても指先に感覚がない。そんな状態でも射たないわけにはいかない。1,2本目は的の下へ大きく外れ、その後も1本のみのヒット。ペナルティーコースを3周しているうちにほとんどの選手が先に行ってしまった。2周目は2つ3つ順位を上げるが、上位からは遅れ、20位ぐらいで2回目のシューティング。

体が温まってきた2回目のシューティングは、ヒット数3/4。ペナルティー1。
じわじわと順位を上げ、3回目のシューティング。
苦しみながらも2本当てた。しかし、ここでとんでもない事態が起きた。監的(ヒット数を確認する人)が示したのはペナルティー3。これはどうしても納得できない。「2本だろうが!!」と悪態をつき、シューティングレンジを後にした。審判の判定に文句を言うなど、スポーツマンとしてあるまじき行為だが、絶対に当たっていた。確信を持っていえる。納得できない。
ターゲットが落ちない的。これでは誤審が起こりやすい。必至でトレーニングしてきた結果が、こんなことで水の泡になっては、選手にとってこんなにばかばかしいことはない。
 しかし、この1本が当たりの判定だとしても上位に食い込めるレースではなかったので、あきらめもついた。今回この判定の犠牲になった選手は多かったようだ。2年前までの世界チャンピオン、マルコフでさえ、パシュート競技で判定を不服として競技を途中棄権している。このような事態が2度と起こらぬよう一刻も早い的の改善と、ターゲットを含めた競技ルールの改善を願う。

↑抗議するわたし

 3週目。一生懸命スキーで前を追ったが、3射目のペナルティー3が響いた。そして迎えたシューティング4回目。モスクワでアーチェリーを射つのもこれが最後。守りに行く順位でもない。思い切って射とう!
 ヒット数3/4。全力で前を追う。日本チームの浩二を追いかけたが、届かず、フィニッシュ。結果16位。
 いつもうまくいくとは限らない。安定して上位に入るためにはシューティングを安定させる必要がある。これは来シーズンの課題だ。

表彰

 すべての競技が終わると、3日間の競技をまとめての表彰が行われた。オリンピックスポーツパーク内の敷地は「春を祝う祭り」だとかで、大いににぎわっていた。春というより真冬の天気だったが。そこに特設のステージ。ここで表彰。最高だ。


スプリントの表彰。私たち日本チームはここぞとばかりに目立つ計画を立てた。私がちょんまげをつけ、日本刀を持って現れる(両方ともおもちゃ)。そこに悪役に扮した日本チームのメンバーがばっさばっさと切られるちゃんばら風の小芝居を計画。
 しかし、表彰が行われるステージは1m50cmほどの高さにあったので、断念。急遽、騎馬に乗って日本刀を振り回す作戦に変更。結果は大成功。他の国の選手も大喜びしてくれた。


バンケット

 その日の夜は各国選手、役員勢ぞろいで今シーズンの表彰。そして夕食。パーティー。シーズン通しての総合優勝は今期3連勝などの活躍が目立ったコンスタンティン(ロシア)。やっぱりチャンスがあれば私も狙いたい。
 いろんな国の選手と話ができて、おもしろかった。もっと英語を勉強したい。英語ができればだいたいの国の選手と話ができる。私の英語はまだまだ不十分なので、細かい話ができない。日常会話ぐらいならあまり困らないが、今回のような場では自分の意見を話し合ったりすることがある。もっと細かいコミュニケーションをとるためにもらいシーズンに向けて、英語を身に付けることも課題だ。
 
パーティー会場(手前:日本 中:スロベニア 奥:イタリア 左:ロシア)