山と雪山とわたし

職員文集というのがあります。それを書いていました。もったいないので載せます。




職員文集

駒ヶ根に来て三年目私には今年やりたい事があった。
 駒ヶ根市といえばアルプスが二つ見える町。特に中央アルプスは学校からもよく見える位置にある。

「登りたい。」

3年前、駒ヶ根市に来た私はすぐにそう思った。普通の人はロープウェーで登るのだろうが、私はふもとから登りたいと思った。
 私にとって山登りといえば、ランニング用のタイツにTシャツ、普通のリュックサックで登るというのが定番のスタイル。最低限の荷物で重装備はしない。動きやすさ重視。山の高さにもよるが、一気に頂上に到達し、おにぎりを食べて写真を撮ったらすぐに駆け下りる。そんな感じです。
 
一年目は登山道の入り口もイマイチ分からず、情報収集に徹する。それでも一度ぐらいはと思ってロープウェーに乗ってみる。あっという間に標高二千七百メートルぐらいのところに到達する。これはこれで楽しい。でもやはり自分の足で登りたい。
 高校生の時にはスキー部のトレーニングメニューに時々登山が組み込まれていた。今の高校生は年に一度富士山に行っているが、私のときは合宿で菅平の根子岳に登ったり、妙高山に登ったりした。
 登山はスキーのためのいいトレーニングになる。登っているときの苦しさはクロスカントリースキーで登りを登っているときの感覚に似ている。下りを下ることで体制を維持する筋肉が鍛えられるとともに、不整地に瞬時に対応する神経が鍛えられる。

 真剣に書いてしまった。長くなりそうなので話の先を急ぐ。

 というわけで大学生のときもトレーニングで山に登った。四年生の時は年間十一の山に登った。地元の山から富士山、北海道の山まで様々だ。その中でも富士山はやはり別格だ。富士山に一度登ると全ての山が低く感じる。どこにでも登れる気がしてくる。(実際のところ、富士山はとてもよく整備されており、登りやすさは抜群である。)
 そういえば富士登山競走というのに過去三回出場した事がある。山梨県富士吉田市役所をスタート。(0合目)富士山頂ゴールという登りのみのレースである。制限時間は四時間三十分。出場者の半分以上が毎年完走できないという恐ろしいレースである。私は大学生のときに出場して、最も早かった時で三時間三十五分だった。五号目を越えると意識が朦朧としてくる。手先がビリビリとしびれてくる。高山+脱水であろう。半分意識があるのかないのかという状態の中、足を進める。もう二度と出ない。登っているときはそう思う。でもなぜか三回も出場しているし、また出たいとさえ思う。それだけ達成感が大きいのだろう。しかしながらこの大会、毎年七月の最終金曜日あたりに開催される事が固定化されている。学校ではだいたい終業式に当たることが多いので、社会人になってからは一度も出場できていない。チャンスがあればすかさず出場したいと思っている。
 
 富士登山競走みたいなレースを山岳レースというが、学生時代に富士登山競走よりもっときつい山岳レースに出場した事がある。

 まさかそんなことになるとは思っていなかった。

「神奈川で30kmぐらいの林道を走るレースがあるんだけど、出てみない?」
 
 学生時代にスキーで知り合った国学院大学の先輩から誘われた。練習がてら出場することに決めた。が、現地に行ってびっくり。どうも山を三つ越えるレースらしい・・・。大会名もそこで知ることになる。

『北丹沢十二時間耐久アドベンチャーレース』

 制限時間が十二時間ということらしい。一緒に行った同じ大学の先輩と顔を見合わせる。この日はスキー部のワンボックスカーの中で車中泊。夏なので熱くて寝れない。
 そんなこんなで朝七時頃スタートはじめのうちは砂利道を行く。軽快に走る。が、途中から大会役員に山道へ案内され、登山道へ・・・。ここからがビックリ。何でこんなところを走ってるんだろう?なんて思いながらも進むしかない。登りはともかく、下りが速い人がいる。何なのだろう。木の根っこがいっぱい出ている登山道を結構なスピードで下ります。転んだら・・・。なんて思うと恐ろしいですね。
 抜かれたくないので頑張っちゃいます。でも足が限界。最後の山では両足が攣りながらもなんとか登った。
 最後は感動のゴール。四位だったかな。商品にワインを貰ったのを覚えている。
 何がきつかったって下りがきつかった。下りは登りよりも足にダメージが来る。そして、その直後に待ち構えている登り。あれはヤバイ。
 そこが富士登山競走よりきつかったところ。

 これこそ二度と出ないと思った。走り終わっても、そう思っていた。それほどきつかった。でもまさかもう一度出ることになるとは・・・。
 
 あれは駒ヶ根に来て二年目のこと。飯山地方のスキー仲間が北丹沢十二時間耐久アドベンチャーレースに出場するとのこと。お誘いがかかります。
 二度と出ないはずの二度目がやってきた。しかしながら、仲間とみんなで大会に出場するのは楽しい。 
 予想通り大会はきつかった。今度こそもう二度と出ません。仲間もそう言っていた。

 だいぶ話が横道にそれました。書きたいのは駒ヶ根の山の話。でも、この大会が私に火をつけたことは間違いなさそうです。

 駒ヶ根に来て二年目の夏。いよいよ中央アルプスを攻め始める。手始めは池山。前の年に六年生が秋の遠足の下見で行っていたので少しは情報収集をしていた。
 実際に行ってみると、駒ヶ根高原スキー場の登山口から一時間ぐらいで頂上に到着。しかし、頂上は木に覆われており、あまり景色がよくない。
 池山がもの足りなかったのもあり、別の日にいよいよ日本百名山の一つ、空木岳に挑戦。(駒ヶ根にはもう一つの百名山木曽駒ケ岳がある。)
事前にインターネットで登山道情報を調査。道の途中に大地獄とか小地獄、やせ尾根という難所が登場し、ビビリます。
登るときは一人で登ります。(走って登る仲間が見つからないので。)登山口から二時間半ぐらいかかって頂上に到着。駒ヶ根二年目にしてとりあえず日本百名山の一つは登りました。

この頃から私にある野望が生まれます。

駒ヶ根百名山を一度に制覇したい。」

地図を見ると縦走も可能。しかしながら、長距離の行程になるため、流石に一人では不安。一般の人ならば二日がかりのルート。さらに三千m弱の山だけに登山シーズンが夏に限られる。挑戦は三年目に持ち越し。


〜そして三年目〜

 友人を誘って中央アルプス縦断に挑戦。一般の人はロープウェーで一気に距離を稼ぎ、駒ケ岳に登ってから空木岳を目指して一泊。二日目に空木岳に登って下山するというのが推奨ルート。
 しかしながらわたし達のルートはその逆。しかも一日(出来れば半日)で行こうという計画。今までの経験から一般の人の三倍近くの速さで上ることが可能なのでこの計算に。
 朝六時半頃、駒ヶ根高原スキー場の登山口を出発。一気に空木岳まで登る。ここまでで三時間弱。
 ここから稜線を縦走。3000m近くまで高度を上げるとそこは絶景。吸い込まれるような景色。遠く御嶽山まで見渡せる。
 稜線の縦走のイメージはわりと平らなところを気持ちよくパァーっと走るイメージをしていたが実際は・・・。岩でガレガレした小さな山をいくつも上り下りの連続。斜度はきつく、なかなかスピーディーに進めない。悪戦苦闘しながら予定時間より遅れて進む。
雷が怖い。夏の山で一番怖いのは雷。昼を過ぎるとその発生率は上がる。しかも稜線には落ちやすい。先を急ぐ。
幸運にも昼を過ぎてしまったのに雷はやってこなかった。そしてゴールは近い。極楽平、島田娘といったロープウェー終点付近の山に到着。ここまで来るとロープウェー終点の放送まで聞こえてくる。流石にここは眺めがいい。観光客をたくさん招くだけの事はある。
駒ケ岳に行く途中で宝剣岳を通過。ここはインパクトがあった。学校からも頂上が見える場所。千畳敷カールの上の尖った部分は見る人の心をひきつけて止まない。ここで記念撮影をし、駒ヶ岳へ。ここで二つ目の百名山を制覇。帰りはロープウェーにて下山。
有意義な一日を過ごすことができた。
今年の目標達成に満足している。


ここまで書いて、さらに書きたい事がたくさん頭の中をめぐっているが、十二時を過ぎたのでここまでにしたいと思う。健康第一。機会があったらまた書きたいと思う。

今年度はいろんなことに挑戦ました。

山だけでなく雪山。

スノーシュー(大会にも出ました。)、氷上トライアスロン(初めてのスケート)。相変わらずクロスカントリースキー、アーチェリーもやってます。

 全部書ききれなくて残念です。そして尻切れトンボでごめんなさい。