日本山岳耐久レースレポートその4〜フィニッシュ〜

第2関門は約42km地点。
ここは大会側が用意した唯一の給水ポイントだ。
スタート時に2L持ってきた水分だが、まだ500mlほど残っていた。
そのため、スポーツドリンク1Lを補給。
第2関門を後にする。
Y下選手がじっくり補給をしていたので、自分は単独で暗闇のコースへと歩を進めた。
ここからはガスがかかっていた。
ヘッドライトの明かりが乱反射し、路面の状況を判断しづらい。
ヘッドライトを消し、ハンドライトで足元を照らしながら進んだ。
大雪の日に車のライトをハイビームにすると見えなくなってしまうのと似ている。

一人になると、とたんにペースを作りづらくなる。
後ろから来た選手にかわされるが、ペースが速く、ついていくことができない。
一気に疲れを感じる。
コースプロフィールでは第2関門を過ぎると、2つの山越えはあるものの、下り基調に思える。
ただ、実際は2つの山への登りの斜度が険しく、また、その下りも高低差が大きいために、難しいセクションであることを感じた。
しかもここまでですでに50km近く走ってきている。
疲れた体にはこたえる。
Y下選手にもかわされる。
再び後ろについてみる。
しかしながら、第2関門までのペースより速い。
Y下さんがゴールまでをイメージしたレース展開の中でペースアップしたようにも思えたし、単純に自分の体が疲れてついていけなくなってしまったのかもしれない。
とにかくその時のわたしにはついていくことのできないスピードだった。
再び一人旅となる。
こうなるときつい。
一歩一歩進むのが精いっぱい。
途中、御前山の頂上など、声をかけて応援してくださる方がいるポイントもあるが、軽く答えるのが精いっぱい。
自分がかなり疲れているのを実感する。
このころからちょっとした登りでも歩かずにはいられない。
明らかにガクンとペースダウンしているが、とにかくゴールしたい。
その一心だった。
そうしているうちに一つ、また一つと後ろからライトの明かりがやってきてはわたしをかわしていった。
どうにもこうにもならなくなり、シングルトラックの道端で仰向けになって休む。
30秒だっただろうか、1分だっただろうか。
とにかくゴールするためには必要な時間に思えた。
こうなると自分を動かしているのは気力のみ。
進むしかない。
スピードは出ないが、なんとか日の出山に到着。
ここからゴールまで約10km下るだけだ。
当初の予定ではここからスピードアップのはずだったが、とてもできそうにない。
日の出山の山頂で少し横になって寝て行きたい気分だ。
しかしながら応援してくださる方がいるので頑張ってみようと思った。
ゴールへと続く階段の手前で屈伸などのストレッチをした後、意を決して進んでいった。
やはり思うようには走れず、ポテポテと走るのが精いっぱい。
頭の中にあるのは「速くゴールしたい。」という思いだけ。
確実にゴールは近づいている。
後ろから軽快な足取りでわたしをかわしていく選手もいるが、どうすることもできない。
長い下りを終え、アスファルトにでる。
ゴールは近い。
これが今の自分の力。
現状を受け入れながらゴールへの道を走る。
もうすぐ走らなくてよくなる。解放される。
午後10時15分、ゴール。

↑ハセツネグラフティより引用
タイム9時間15分。
総合26位。

前半はペースを抑えて走る「カメさん作戦」はうまく実行できなかった。
しかしながら、勝負した結果なので悔いはない。

サポートしてくださった方々、応援してくださった方々、ともに挑戦したすべての選手に感謝し、レポートの結びとさせていただきます。
皆様、ありがとうございました。